ああわれひとととめゆきて

  • 劇的ビフォア・アフター

おそらくACCSにとっては寝耳に水のできごとだったろう。それだけに事態収拾に向けて迅速な行動をとった点は高く評価できると思う。ただしこの感想は当時の感想で、今は実はちょっと違う(後述)。同時にホストサーバーを運営し、タコなCGIを放置したままうやむやなバージョンアップ情報しかユーザーに配信しなかったファーストサーバ株式会社からのアナウンスが一言くらいあってしかるべきだと思われるが、これもどこにもない。
もし、本質的な意味で加害者がいるとすれば、個人情報を垂れ流すようなCGIをリリースしていたベンダーこそ加害者であるはずだ。なぜなら、垂れ流された個人情報の主が被害者なのだから。微妙な言い回しをするが、officeのプレゼンはトリガであったにすぎない。(結果的に)愉快犯じみた状態でそれを公表してしまったものの、その手法はなかば古典的ともいえる方法なのだから、遅かれ早かれoffice以外の誰かがやってい{た|る}といえなくはない*1
一方でofficeに発表の場を与えることになってしまったA.D.200Xからのアナウンスは、なぜか非常に遅かった。これは何事かが舞台裏で進展していたからに相違ないのだが、直接関わりのない人々にとっては、そんなことは知ったこっちゃないわけで、実際11月のACCSの動きと連動してアナウンスがなされるのが普通の動きだったろう。そのあたりの情報が出てくるのは2004年1月の朝日新聞の報道を待たなければならない。
2004年1月の朝日新聞の報道は、2ヶ月前のネタの焼き直しでしかない。まずなによりもこれが一番解せなかった*2。さらに当時、このネタで警察が動くとは、とても思えなかった。「office2月逮捕説」がまことしやかに流れていたが、そんなのあり得ないと思っていたのだ。むしろ、古賀代議士の学歴詐称と同様、ニュース枯れの時期、どう報道してもネガティブキャンペーンにしかならない自衛隊派兵問題を薄くするための方策としか取れなかったのだ。
実際問題として、ネット上で自衛隊派兵よりはofficeネタを議論する方が“トレンド”となってしまったわけだし、テレビでは連日連夜、古賀代議士が泣いたの喋ったの雲隠れしたので大騒ぎになったわけで。
テレビでは古賀代議士を、ネットではofficeを、というのは考え過ぎか?
その流れを加速させたのは2ちゃんねるで4人分の情報の流出だった。セキュリティカンファレンスに集まるのが、必ずしもセキュリティに対して意識の高いユーザーばかりではなく、単なる愉快犯も紛れ込むことが証明されたわけだけれど、しかしこれはofficeの咎でもA.D.200Xの咎でもない。イベントの来場者を誰がどうやって選別できよう。ましてや、「お願い」に反する行為を平気で行なえるカスを選別するなんて、そんなの神さまだって不可能だ*3
不運は多重に連鎖し、結果的に2ちゃんねるで4人分の情報は流れ出し、officeは逮捕され、その顔や履歴や番地まで含む住所といった個人情報は世間にばらまかれることになる。

*1:だからといってofficeの行動が正当化されるわけではもちろんない

*2:スパムメールも許容する寛大かつ偏屈なMLを運営する某コミュニティの顔役は、首をひねる我々に首をひねっていたようだが

*3:そんなことはないか