quarz-head council vol.1 at 新宿 PIT INN

場所:新宿 PIT INN
開場:19:30
quarz head(Sax、electronics)
featuring:rebustape(mixer、electronics)/abdou bayefall(djambe)
久しぶりの新宿PIT INNは、新生・藤原大輔のお披露目ライブ(といって、いいのかな?)。
以前、彼が率いていたバンドphatは、実はCDでしか聴いたことがなく、ライブにはお邪魔できずにいたので、それと比較してどうのこうのいうことができない。まあ、どうのこうのいうのが目的ではないので、それはそれでいいけど。
ちょっと話は逸れるけど、Weather Reportの1979年のライブアルバム『8:30』(ASIN:B0000029FR)でジャコ・パストリアスが短いフレーズをリバーブとエコーを使ってループさせ、なおかつピッチを変えて音程をあげて、それをバックにアドリブを展開する曲がある(CDだと4曲目、LPだと5曲目の「slang」がそれ)。
藤原大輔改めquarz headの音の作り方は、それに近い。ミキサーのrebustapeがバックトラックを担当し(リズムトラックとSE*1)、その定型クラブビートににabdou bayefallのdjambeが絡む。
強烈な縦ノリのビートと表情豊かなポリリズムに、quarz headがシーケンス用のフレーズを(サックスで)載せる。そのフレーズによって色合いが変わり、変化したビートとリズムをバックに、大輔が歌い上げる。歌っている最中に新たなフレーズが生まれると、すかさずそれがシーケンスされ、ユニット全体の方向性が変化する。
いわば、泡のように生まれる魅力的なフレーズが次々と新しい曲のモチーフとなって、真の意味での連作短編集のように有機的に次の作品を生み出してゆく。
ビートは完全にクラブ系なので、そらもう体を揺するだけじゃなくて“踊らせろ”状態に持っていかれるし、4〜8小節で繰り出されるシーケンスフレーズもとてもファンキーなので、ドーパミンはドハドハ分泌されるのだけれど、やっぱりそのフレーズを入力して曲にフィードバックするところを目の当たりにしちゃうと、脳ミソが解析モードに入ってしまって、頭と体が分裂しちゃう。
たとえばデュオセッションだと、相手の音(や音列やリズム)に反応して、こちらもどんどん形を変えてゆくことになるんだけど*2、それがデジタル相手であるせいでどうしてもタイムラグが生まれてしまい、そこにanalysis headが侵入してきちゃうのだった。
デジタルセットが人力入力を要求する限り、ここは超えられない壁かなあ。このコンテンツにしても、viを立ち上げてぽちぽち入力してる時点でだめぽな感じ。だからといって、言語関連のデータを脳ミソから直接入力可能になったら、それはかなり問題が多そうでヤバイ。いずれにしてもデジタル相手のセッションって、超えなければならないテクノロジーの壁がまだあるなあ。
それはともかく。
ミュージシャン相手のセッションだと、相手の力量はもちろんのこと、都合とか体調とか精神状態とか、不確定な要素に左右されることが多いのだけれど、それがデジタルに落とし込んだ数秒(数分)前の自分が相手となることによって、音楽を制御しやすくなること。また、クラブ系ダンスビートを採用することでドーパミンが分泌されやすくなるといった良いことの反面、デジタルに落とし込まなければならないためのタイムラグと、自身が自身の可能性を穿り返さなければならないという、ひとりSMめいた作業によって、外に向かうベクトルが内側に向いてしまう可能性もあったりして、そこがどうなんだろうと思ったり。
そのあたりは、今後のライブから聴こえてくるだろう。
でもまあ、ファーストインプレッションは、II-V7のパターンをシーケンサーに打ち込み、それを延々とループさせながら楽器を練習していたころというのは内緒。

*1:もちろんシステムエンジニアや某出版社名ではない。サウンドエフェクト

*2:そしてそれがJazzの醍醐味のひとつなんだけど