アイデア商品
かつて某著者と携帯サイトでファンタジー仕立ての読み物型プログラミング入門書を作れないかと画策していた時期がある。携帯読み物サイトが盛り上がっていたころの話で、プロトタイプまで何種類か作り、携帯勝手サイトまで作って各携帯でどう表示されるかまで実験していたのだが、結局、この企画はボツった。
著者にしてみれば細かく話を繋いでいけるから執筆自体が楽であり、最終的には書籍にしやすいという思惑があったようだけれど、おれにしてみれば、プロトタイプを作りこんでゆくにしたがってダメさがボロボロ見えてきてしまったのだった。
箇条書きにすると、
- どこまで面白い話に展開できるか
- ストーリーが面白くないと誰もついてこない
- 一回でも読み忘れると学習に乗り損ね、プログラミング書として機能しなくなる
- どこまで実用的な話に展開できるか
- 携帯メディアが実用系学習系に向いていない
ということだ。
著者のネームバリューからすると、オープン当初のヒット率は高くなることが見えていたが、彼についている読者とわれわれが想定していたターゲットゾーンのレイヤがあまりにもかけ離れているため、リピート率は低いことは最初からわかっていた。
で、リピート率を上げるため仕掛けはコンテンツに依存すること、依存するコンテンツの物語ベクトルと学習ベクトルが重なりにくい*1ことを勘案すると、携帯サイトを使った読み物分野からは潔く撤収するというのが結論だったわけだ。
そんなことを思い出したのは(ってゆうか、胸に秘めていただけだけれど)、本屋でファンタジー仕立てのプログラミング書を見つけたせい。
プログの森―旅して学ぶプログラムのしくみ
posted with amazlet at 04.12.03
で、個人的な興味は上記各点をどこまでクリアしているか、というところに絞られる。
まあ、紙メディアなので、ワケがわからなくなったらページを戻ればいいという旧来の発想なので、ストーリー展開そのものに趣向が凝らしてあるわけでもなく、プログラミングの概念(FIFOとかLIFOとか)は図版とテクニカルタームで説明しているわけだから、これまでの学習書とあまり変わらない。
プログラミング書の歴史が段差の大きい階段をなだらかな傾斜にしてゆく作業と捕らえれば、雨水用の段差をなくしました、という感じ。
けなしているわけではなく*2、「物語のフレームワークと学習用のフレームワーク」の差を解消する手法を見つけない限り、この試みは失敗するだろうな、というのが労せずに把握できたので、シアワセ。